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1 .はじめに
日本においては医療の高度化とともに医療者側に求められる患者のニーズが高まり、医療技術や専門知識の向上のみならず、倫理的に判断し対応することが求められている。また、臨床の現場では、疾患以外にも価値観の多様性が招く医療従事者や患者・家族の考えの相違、患者の生活背景など複雑な問題が絡み、医師や看護師など各職種が単独で医療・看護を実践するには限界が生じている。その対策の一つとしてチーム医療が推進され、多職種が専門性を発揮しながら協働して医療の質を高める取り組みが実施されている。
しかしながら、先行研究では、看護師は医師との関係性において倫理的ジレンマを感じていることが報告されており、倫理的ジレンマがチーム医療実践における妨げとなっていることが懸念される。医師と看護師間、または医師と患者・家族間における意見の不一致、医師の協力体制の欠如、医師が看護師の意見を受け入れないなどの倫理的ジレンマが生じることで、看護師は医師や患者・家族の間で葛藤しながら診療の補助業務や日常生活の援助にあたらなければならず、そのような状況下では、看護師の役割を十分に発揮することは難しい。専門職間の関係性に対する倫理的ジレンマを最小限にとどめ、職種間での良好な関係性を築くことがチーム医療を推進していくうえで重要であり、質の高い医療・看護を提供することにつながると考える。
先行研究では医師の倫理に関する研究は報告されているが、それらは、医師の倫理観や教育システムの調査を基に、倫理教育の課題と今後の取り組みを検討した内容や、倫理的に慎重に対応すべき終末期や救急時の治療に関する事例を検討した内容が主であり、医師がどのような場面で倫理的ジレンマを感じ、そのときの思いはどうであったのかの詳細を明らかにしている研究は見当たらない。そこで、筆者らは、よりよいチーム医療と患者ケアの実践のために、医師がどのような倫理的ジレンマを経験しているのか、倫理的ジレンマをどのように対処しているのかについて調査を行った。その結果、10のカテゴリーが示され、そのうち上位6が関係性によるものであった。今回、関係性における医師の倫理的ジレンマについて、医師の語りを中心に報告する。
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