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はじめに
臨床実践家が感じる論文に対する敷居の高さは,日々の実践の時間的忙しさとその時,その場で起こった問題解決に追われ,解決した問題は決裁済みの過去に追いやられ,決裁済みの箱から書類を捜し整理する煩雑さに付き合っていられないことも,一因にあると推察する.しかし,その決裁済みに埋もれている情報には,総ての実践作業療法士に役立つ供用理論や,技術として作業療法士に利用可能な形にして報告して頂きたいものが多くあるはずである.臨床実践で感じている未だ言葉になっていない理論や法則や大切な判断を,報告書,つまり論文としてまとめる習慣がないとか書き方が不確かであることも,敷居の高さの一因となっているのかもしれない.しかし,研究論文は形式が決められた一種の問題解決の報告書なので,ある意味では自分の気持ちを正しく伝えようとする手紙を書くよりも簡単である.研究論文の形式は,つぎの8つの項目をもつ問題解決の報告文章である1).1.研究表題(研究疑問と結果を端的に表した標語),2.研究者名,3.緒言(研究の動機と必要性あるいは目的と研究疑問,つまりこの論文で答えを出そうとすることの明示),4.方法(研究という問題解決に用いた方法を,他者が同じ程度に追体験や追試験できる程度の詳しさで示す説明),5.結果(方法から得られた情報を主として図表にできる程度に要約したもの),6.考察(結果が既存の情報との異同や新知見である理由,臨床での意義,更に展開すべきことなど),7.結論(簡潔に要約した研究疑問への答え),8.引用文献.
論文とは問題解決の報告なので,研究疑問さえ決まれば研究方法が自ずと決まる特徴がある.今回の論文を例として示すと,先に明示したように『ここ10年間に機関誌「作業療法」へ掲載された研究論文で,研究疑問と発見された知見を確認し,発展させるべき研究にはどのようなものがあるのか』という研究疑問への答えを見つけることである.『 』で示した部分が研究疑問に相当する部分であり,その研究疑問の形式から仮説形成的研究になり,その方法は調査をして現状を記述することも示している2).
研究論文を書くことを,臨床家の日常業務としている問題解決技法の1つであるという実感を得て頂き,さらに,この論文で見出したことから種を発芽させ稔らせ,その成果を総ての作業療法士と共有したいという密かな想いを抱いてこの研究を行う.
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