◆特集 過去10年間に掲載された論文の分析と投稿のすすめ
精神科作業療法に関連する論文の分析と投稿のすすめ
簗瀬 誠
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1鹿児島大学医学部保健学科臨床作業療法学講座
pp.239-245
発行日 2007年6月15日
Published Date 2007/6/15
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はじめに
20年ほど前,ある学会の精神障害分野のセッションで,エソロジー(比較行動学)の方法を用いた研究の発表に対して,精神病は心の病気ではないのか,という質問が出たことを覚えている.この一場面は,精神科作業療法研究の方法が多くの関連する学問に依拠しながら多岐にわたっており,さらに自分自身が依拠する学問の相対的な位置づけについてまだ関心が薄いことを示す象徴的なできごとであった.
小論では,機関誌「作業療法」に1996年から2005年までの10年間に掲載された精神科作業療法に関連する論文の分析を,研究の方法と目的の観点から試みる.分析にあたっては,精神医学研究の方法や目的の分類を参考とした.その理由は,精神医学研究が自然科学,人文・社会科学を取り入れた多岐にわたる方法を用いており,さらに近縁にある精神科作業療法研究に大きな影響を及ぼしていると考えられるからである.なお,ここで言う方法とは,「認識目的を果すために思考活動のよるべき方式.思考対象の取扱い方」(広辞苑,第5版)を意味している.
この小論での試みが,精神科作業療法の研究者が自分自身の依拠する学問,言い換えると上記した意味での方法をあらためて意識し,個々の研究が相対的に位置づけられることで,精神科作業療法研究がより系統的に行われる端緒になればと思う.
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