◆特集 経験を学ぶ—臨床にひそむ落とし穴
広く浅い身障領域での経験から
小野 敏子
1
1新潟こばり病院
pp.353-356
発行日 1999年10月5日
Published Date 1999/10/5
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はじめに
私の「臨床経験」は試行錯誤の連続であった.今現在でも症例を前にして「あー,もっと効果的な方法があったのではないか」と不安に駆られることが多々ある.夜中に,「私の読んでいない文献に何か重要なことが書かれていたのではないか」と冷たい汗をかくこともしばしば.焦りや後悔の念に襲われることなど日常茶飯事.28年余も経験を積んできてこのありさまである.
振り返ってみると,何例もの症例・事例を積めば積むほど“学ぶ力”が大きくなるというものではなさそうに思える.観て,聴いて,触れて,感じて,考えて,試行錯誤する中で活路を見出していく体験の仕方や学び方の,上手・下手の要素がより大きく影響するように思う.学び方が下手な私の経験談がお役に立てるかどうかは,はなはだ疑問ではある.本稿では,何一つ理論立てた説明はしていない.今までの仕事にまつわる感想文として,また,私と同じように体験の仕方や学び方がちょっぴり下手な若い人々への励ましの手紙として,私の広く浅い経験を述べていくことをご了承いただきたい.
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