- 販売していません
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
先進医療技術の発達に伴い,集中治療室(ICU)の生存率はこの四半世紀で大幅に向上した.しかしながら,救命率が向上し患者が長期生存するようになると,ICU退室後の機能予後の向上をめざす治療戦略が重要視されるようになってきた.このようなICU退室後の亜急性期・慢性期の身体的・心理的な諸問題が注目される中,2012年にSociety of Critical Care MedicineがICU-acquired weakness(ICU-AW)やpost-intensive care syndrome(PICS)という概念を提唱し1),それをきっかけにICU-AWやPICSに関するさまざまな報告がなされるようになった.ICU-AWはICU入室後に発症する急性の左右対称性の四肢筋力低下を呈する症候群で,critical illness polyneuropathy(CIP)やcritical illness myopathy(CIM)によるびまん性筋力低下症候群の総称である2).PICSはICU在室中あるいはICU退室後,さらには退院後に生じる身体障害,認知機能・精神の障害であり3),ICU-AWはPICSの運動機能障害の中で最も重要なカテゴリーと考えられている.ICU-AW/PICSを予防するための対策は多岐にわたるが,中でもICU入室早期からの適切なリハビリテーション療法や栄養療法は重要度の高いものと考えられている.
当院は874床の特定機能病院である.高度救命救急センター・脳卒中センター・外傷センター・総合周産期母子医療センターも有することから救急疾患も数多く受け入れている.8床のclosed-ICUには年間400名を超える入室があり(表1),診療科ごとの内訳は,心臓血管外科患者56%,外科系診療科患者(肝移植,肺移植,食道・頭頚部がん,敗血症性ショック,急性呼吸窮迫症候群,多臓器不全など)31%,内科系診療科患者(敗血症性ショック,急性呼吸窮迫症候群,多臓器不全など)13%である.早期離床・リハビリテーション加算を算定しており,リハビリテーション治療は入室早期から積極的に治療を行っている.また,ICU退室後は,リハビリテーション治療の効果を上げるための栄養療法についてもリハビリテーション科医が主科と協力して関与している.
Copyright © 2021, The Japanese Association of Rehabilitation Medicine. All rights reserved.