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慢性疼痛とは
痛みは,古くからわれわれを苦しめてきた問題であり,また,さまざまな場所で研究もされてきた.とりわけ痛み長く続く病態=慢性疼痛になることは非常につらく苦しいことであるが,国際疼痛学会はこれを「治療に要すると期待される時間の枠を超えて持続する痛み,あるいは進行性の非がん性疼痛に基づく痛み」と定義している.急なケガなどの場合,痛みは体の異常を知らせる警告反応として重要な役割を果たしている一方で,それが長引く慢性疼痛では警告の意義が乏しくなると同時に不快な症状として日常生活に支障を生み,生活の質を落とす要因となっている.fear avoidance model(恐怖回避モデル:図1)は慢性疼痛が悪循環に陥るメカニズムを示すモデルとされている1).痛みは常に恐怖や不安を伴うが,恐怖・不安を抱いていると,痛みが生じる可能性がある活動を実行することができず,活動の回避が長期にわたって継続し,二次的な問題が広がっていく.例えば,痛みのために一部の能力障害が生じると,それまでできていた楽しみが痛みのためにできなくなり抑うつ状態になったり,疼痛回避行動が拡大し寝たきり状態になることにより廃用症候群になってしまうなどの変化がみられる.さらに,こうした能力障害や抑うつ状態,廃用症候群によって,より痛みを感じやすくまた生じやすくなり,行動のさらなる増悪につながる悪循環が形成されるとされている.
通常の痛みは,外傷や疾病などさまざまな原因によって生じるが,その痛みが慢性化をたどるメカニズムを病態学的にみてみると,末梢の組織や脳・脊髄を含めた神経系の機能変化と同時に運動器に関する病態の変容(筋萎縮や関節拘縮,心肺機能低下など)の関与が大きいことが,近年の研究から明らかになってきている.
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