連載 古今東西 見逃せない研究論文・書籍・第11回
Neuroscience:Exploring the Brain. 4th Edition : Bear MF, Connors BW, Paradiso MA:Wolters Kluwer, 2016
近藤 和泉
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1国立研究開発法人国立長寿医療研究センターリハビリテーション科・部健康長寿支援ロボットセンター
pp.1035
発行日 2018年12月18日
Published Date 2018/12/18
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- 文献概要
■ はじめに
私がこの本を知ることになったのは,古くからの友人である尾崎勇先生の紹介による.2009年,尾崎先生が教鞭をとる青森県立大学で嚥下障害に対するリハビリテーション医療をテーマにした特別講義をさせていただいた.そのとき,彼は「最近読んでおもしろいと思った.リハビリテーション医学にも役立つのではないか」といって,この本を勧めてくれた.彼と私はたまたま同じ時期,1988年に留学し,尾崎先生はベルギーの電気生理学の泰斗Desmedt先生の指導の下,体性感覚誘発電気の研究を行い,私はロンドンのBobath CenterのNeurodevelopmental treatment(NDT)のコースに参加した.
私にはNDTのコースに参加する数年前から悩み続けていた疑問があった.周産期に脳の障害を引き起こすようなイベントがあっても,正常な運動発達を遂げるお子さんとそうでないお子さんがいることがなぜなのか,原始反射の残存や過敏性などの徴候があって将来的な運動の障害が予想されていても,それがどのような機序で異常な運動の増強につながっていくのかということがわからなかったのである.悩み続ける私にわずかな光を与えてくれたのは,Njiokiktjien著の“Pediatric Behavioural Neurology”という書籍であった.上記のNDTのコースに参加するためLondonに滞在しているときに現地の書店でみつけたものだったが,当時の最新刊でシナプス形成に根ざした神経系の発達が2歳までに非常にドラスティックな経過をたどることを解説してあり,私が臨床で見ていた事象の理解を進めることにつながった.
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