会員の声
研究報告の質について
安保 雅博
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1東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座
pp.435
発行日 2015年7月18日
Published Date 2015/7/18
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先日,大腿骨近位端骨折術後のリハビリテーション(以下,リハ)論文1)に対する会員の声2)がリハ医学に掲載された.しかし同誌に掲載された,この会員の声に対する回答3)には誤解を招く記載があるように思われる.この一連のやり取りにおける最大の論点は「この論文における同等性に関する記述が妥当かどうか」につきる.土井らは回答の中で「本研究の有意差なしの項目は同等性ありと判断できるものと考える」と述べている.しかし回答に記載されている内容だけではやはり不十分であり,同等性試験を実施しない限りこのような結論を導くことは不可能である.そして同等性試験でない本研究から同等性を主張することは科学的に妥当ではない4).
このように統計学的な有意差がないことをもって同等性を主張することに関する問題は以前より報告されており5),研究報告の質の問題という観点からは「誤解を与える報告」(Misleading reporting)に分類される6).また土井氏らは回答の中で「CONSORT2010声明に基づいた厳密なランダム化並列試験を行っている」と述べている.しかし,ランダム化の具体的な方法,サンプルサイズの計算,ブラインディングの有無,臨床試験登録についての記載のない本論文がCONSORT声明に基づいているかどうかは判断不能であり,「不完全な報告」(Incomplete reporting)に分類される研究報告の質の問題6)もまた有している.
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