レポート「現場最前線」
新型コロナウイルス感染患者に対する言語聴覚療法の経験
兼岡 麻子
1
,
荻野 亜希子
1
,
松﨑 彩花
1
,
横田 一彦
1
,
篠田 裕介
1
,
芳賀 信彦
1
1東京大学医学部附属病院リハビリテーション部
pp.123-127
発行日 2021年6月15日
Published Date 2021/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.6001200328
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1.はじめに
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,発熱や呼吸器症状を主症状とする感染症で,2019年12月,中国の武漢市における流行を契機に世界各国へと急速に波及した.2020年10月現在,世界の累計感染者数は4,130万人,死亡者数は113万人にのぼり1),流行収束の兆しはみえない.
新型コロナウイルスは,鼻腔や口腔,咽頭に多く存在し2),接触や飛沫を介して伝播する.言語聴覚士(以下,ST)は患者の口腔咽頭を観察し,直接触れることも多いため,療法を介した接触・飛沫感染のリスクがある.また,発声,会話,咳嗽などで発生するエアロゾル(直径5μm以下の微小粒子)が療法室内に滞留すると空気感染も起こりうる3).これらの感染経路を封じるため,手指衛生および環境衛生の徹底,適切な個人防護具(PPE)の着用,またエアロゾルが生じる状況では微粒子用マスクの着用が必要となる4).
当院では,2020年4月初旬より,東京都の要請に応じてCOVID-19重症患者を救命センター集中治療室(EICU)で,また中等症患者をCOVID-19専用病棟で受け入れている.リハビリテーション部言語聴覚療法部門では,主に入院患者に対する言語聴覚療法を行っており,COVID-19患者にも介入してきた.本稿では,2020年3月から9月までの当部門の取り組みをまとめ,COVID-19患者に対するSTによる介入の意義について考察する.なお,患者情報の使用については,東京大学大学院医学系研究科・医学部非介入等研究倫理委員会の承認を得ている(研究倫理審査番号2373-(3)).
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