特集 小児医療者のための虐待の知識
新型コロナウイルス感染と虐待
溝口 史剛
1
Fumitake Mizoguchi
1
1前橋赤十字病院小児科
pp.1182-1187
発行日 2024年11月25日
Published Date 2024/11/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000001011
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はじめに
コロナ・パンデミックにより,親の資力や家庭環境の質における不平等が拡大し,家庭支援サービスが受けにくくなることと相まって,虐待の増加/重症化が危惧された。この間,世界中からコロナ・パンデミックと虐待の増加/重症化に関する研究報告が出され,その数は172編にのぼっている1)。その結論には,一定の傾向はみて取れず,身体的虐待に関しては発生数・重症事例数ともに「増加」と「不変」にほぼ二分されており2),また,身体的虐待のなかでもとりわけ重症度の高い虐待類型である虐待による頭部外傷(abusive head trauma : AHT)に関する報告では,重症例は「増加した」と「不変」と「減少した」との報告がほぼ1/3ずつで一定の傾向は確認されておらず,その傾向はコロナ・パンデミックがもたらした医療へのアクセシビリティの変化や,固有の文化的背景により異なる可能性があるが,大きく文化圏が異なるわけではない米国の各州からの報告でも,一定の傾向は確認されていないのが実情である。
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