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はじめに
皆さんが送る日々の生活を振り返って,毎日欠かさず使うもの・肌身離さず携行するものにはどんな効果や意味を併せ持っていますか。例えば,私でしたらスマートフォンは,携帯電話でありながらアラーム機能で目を覚まし,即座に時間とメールを確認し,必要時にはその場で返信までしてしまいます。スケジュールもすぐに確認でき,隙間時間には好きな音楽でリラックスできる情報端末であり,それがなくては1日を過ごせない道具となっています。仕事に向かう自分の車は,毎日使う移動の道具でありながら,ようやく買い求めた自慢の車種であれば単なる移動手段であるだけでなく,所有する満足感や所有欲を満たす意味も併せ持つかもしれません。そうそう,毎朝カップ4杯分のコーヒーをドリップして持ち歩くコーヒーボトルは忙しい業務の合間にホッと一息をつく,私の生活には欠かせない習慣を支える道具であると言えます。このようにひとの生活には道具の持つ機能に加え,生活をより豊かに・より便利にする効果や機能,その人だけにある特別な意味を持つものがあります。
では,何らかの障がいのある人やその支援者が用いる福祉用具はどうでしょう。介護保険法における福祉用具とは,「要介護者等の日常生活の便宜を図るための用具及び要介護者等の機能訓練のための用具であって,利用者がその居宅において日常生活を営むことができるよう助けるもの」とされ,13種目が保険給付の対象となっています。私たちはこれらの用具が,障がいのある人やその支援者にとっても,生活をより豊かに・便利にし,その人だけにある特別な意味を持つものになってほしいと願っています。
それは,特殊な用具が存在するのではなく,どこにでもある用具や機器を用いても,支援者がどうかかわるかによって,それを使う人の生活に彩りが加わり,今までとは違った主体的な生活・異なる景色が見えるようになる。そんな『TOOL』を探求するため,TOOL委員会は活動しています。
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