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はじめに
在宅の支援現場で車いすにかかわるのはリハ職(理学療法士,作業療法士)の役目だと思っている。何の目的で使う車いすなのか。そしてその車いすは本人の身体の条件に合っているのか。またどうすれば合わせることができるのか。そのことについての知識と技術をリハ職はもっていなければいけない。シーティング—seating(車いすユーザーが良い姿勢を保持できるように身体条件に合わせて車いす・クッションの適合調整を行うこと)が,リハ技能として診療報酬に明記されたのは2018年だ。だが実際の車いすの提供と適合はどのようになされているだろうか。また,医療職が目指す良い姿勢とはいったいどんな姿勢のことを言っているのだろうか。
私が出会う訪問看護利用者の多くは介護保険対応なので,レンタルで車いすを手に入れる。医療機関のシーティングクリニックで当事者の意向にそって,関係職種が集まり医師が指示書を出してオーダーで車いすを作るなどという場面はほとんどない。補装具という扱いで車いすをオーダーする人は,車いすユーザー全体からいうと少数派だろう。まれにオーダーで作る車いすにかかわることがあるが,そんな時でも関係職種が顔を合わせるなどという場面はめったになく,腕を磨くという機会にはほとんどならない。
オーダーで作る車いすのほうが絶対に良いかといえば,そうも言いきれない。身体の条件は変わっていくし,一回で良い車いすが作れるわけではないのでレンタルの制度は悪くはない。車いすの選択肢は増えてはいるし,いろいろ試せるし,メンテナンスも利くし調整ができるものもある。だが,本人に合った良い車いすが調整され提供されているかといえば,また別の話になる。現実にはケアマネジャーや福祉用具レンタル業者が本人や家族の意向を聞いて決めることが多く,本人の姿勢や機能より,狭い部屋に置けるか,たためるか,小回りが利くか,軽いかなど,周りの条件で決められることも少なくない。そこにはシーティングもなにもなく。
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