特集 弱者への暴力
子どもへの暴力:貧困
山野 良一
1
1厚木児童相談所
pp.638-642
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101623
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「虐待大国」アメリカと貧困問題
日本では,児童虐待問題に対する本格的な対策は,ようやくここ10年あまりの間に始まったばかりだが,米国では1960年代という早い時期から,社会として国家として,この問題に積極的に取り組んできた.児童虐待問題に対応する米国のシステムは,日本に比べ格段に優れたものを持ち合わせており,そこにかける資金や人的な資源は比べものにならないほど豊富である.
しかし,他方で原田1)が「虐待大国」と呼ぶように,米国では膨大な数の子どもたちが児童虐待の被害に遭い,その程度も深刻である.米国全体で年間に90万人以上の児童が虐待による被害を受けており,この数はイギリスやフランス,ドイツ,日本と比べても桁外れに多い.また,年間に1,500人以上の子どもたちが児童虐待によって亡くなっている2).この数は,米国における0~14歳年齢の交通事故死の数(約1,800人)に匹敵するものである3).
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