巻頭言
ローカル・リハビリテーションで進もう!
四本 かやの
1,2
1神戸大学大学院保健学研究科
2神戸大学医学部保健学科
pp.158-159
発行日 2016年3月15日
Published Date 2016/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200327
- 有料閲覧
- 文献概要
物的流通システムの構築に伴い,地球の裏側で生産された工業製品や農産物までもが短期間で供給されるようになりました。情報通信技術の発展に伴い,地球の裏側で起こった出来事が数分後には世界中に共有され,その情報で世の中が変わることも起こりました。グローバル化と言われて久しいですが,確かに地球は人間にとって小さく感じられるようになってきました。世界を意識すると,共通語である英語を用い意思疎通を図ることは,昨今の必須事項であるとも言えます。しかし,英語を自由に使えるようになったからといって,英語圏の人々に溶け込めるわけではありません。意思疎通やビジネスは可能になっても,特有の風習や文化など言語の背景にあるものを理解し,受け入れることなくして,その地域の中には溶け込めません。例えば,わが国の代表的文化の1つである茶道では,石を置くだけで立ち入り禁止を示したり,打ち水で亭主の歓迎の気持ちを表したり…,言葉を介さずとも伝わる,いや,言葉にすると嘘っぽくなったり,客人の心理的負担になるからこそあえて言わない,という文化があります。
地域リハの実践の難しさは,ここにあると思います。固有の習慣や文化,価値観を共有する集団,すなわち地域を理解しそこになじむことなく,意思疎通だけ可能になれば達成できるものではないのです。歴史や気候,風土に育まれたその土地の文化を知る,そして人の気質を知りそれらを尊重し,というような…多くの課題を乗り越えて,すばらしい実践が実ります。研究者が机上でパソコン相手に格闘しても,現実的方法論は得られません。まさにフィールドワークあるのみと言って過言ではないでしょう。
Copyright © 2016, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.