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先天性疾患に伴う脊柱変形
[1]はじめに
先天性疾患の中で最も多い疾患は筋ジストロフィーである.脊椎外科領域で問題となるのは脊柱変形である.また,筋ジストロフィーに比べ頻度は少ないもののミオパチーや脊髄性筋萎縮症も比較的多い疾患であり,脊柱変形を生じることが多い1,3,10,14,15).
これらは総じて神経・筋疾患と総称されるが,神経・筋疾患は神経原性疾患と筋原性疾患に分類される.また,神経原性疾患は上位運動ニューロン障害によるものと下位運動ニューロン障害によるものとに分けられ,疾患や神経の障害された部位により,痙性(spastic),固縮(rigid),弛緩(flaccid),アテトーゼ(athetoid)といった臨床症状を呈する.これに対して,筋原性疾患は筋力低下を示すのが通常である.中には筋緊張性ジストロフィーといった疾患もあるが,多くは筋力の弛緩を示す.神経原性疾患は筋の緊張が強くなるものも多い.これらの疾患により背筋を中心とした筋力低下や緊張が生じ,左右の背筋のアンバランス,脊柱の直立の維持の困難などが原因となり脊柱変形が生じると考えられるが,右凸の側弯変形が多いという事実は特発性側弯症と同様に説明が困難である.
なお,脊柱変形を引き起こす神経・筋原性疾患としては多くのものが知られている(表 1).
通常,医師が遭遇することが多いのは特発性側弯症であるが,思春期を過ぎるとある程度のカーブの大きさを過ぎなければ脊柱変形の進行は停止することが多い14).これに比較して,神経・筋性側弯症(脊柱変形)は,脊柱変形が生じると年齢にはかかわりなく高率に進行性であり,ときに重篤な変形に至る1,3,10,15).また,特発性側弯症には装具の有効性が示されてきたが14),神経・筋疾患に伴う脊柱変形には装具の効果は期待できないとされており,多くの症例では手術的治療が必要となる1,3,10,15).
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