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はじめに
関節機能再建への挑戦は,古くは1800年代後半よりセルロイド,銀,亜鉛,象牙,関節包膜などを使用した試みがなされている19).主に股,膝,肩,肘,足関節,手・指関節において臨床での挑戦がなされてきた.ドイツのGluckは1880〜90年にかけて結核による膝関節,足関節病変などに金属や象牙,さらには骨セメントなどで14関節の置換を行い,そのうち5関節についての詳細を報告しているが,短期の成功後多くは感染のため抜去に至ったとされている4,7).
各関節においては解剖学的,力学的,病態的差異により発展の歴史が異なる.本稿では,人工椎間板特集の前座として主に股関節を中心にその歴史を述べる.実用化されて半世紀以上になるが,実に多くの人工股関節(total hip arthroplasty:THA)が開発され,失敗を繰り返しながら発展してきた.図 1にThe Adult Hip14)のChapter 1に記載された過去の多く人工股関節をまとめたが,実に多種多様のTHAが開発され消え去っていることがわかる.すべてを包含すると膨大冗長になるので,問題の焦点を理解しやすくするため,主な要素についての成功と失敗の歴史を主体に解説する.
股関節において現在に通じるTHAとしては,英国のPhilip Wilesが1938年から6例のTHA(metal on metal resurfacingとtrochanteric hip nailを組み合わせた形状)を行ったが,第二次大戦で記録が消失し,35年後に1例のみ関節が残っていたもののほぼ強直状態であったことが述べられている15,17).以後,1952年のMooreやThompsonの人工骨頭およびMcKee,Ringなどによる人工股関節が主に英米で開発され本格的に臨床応用が始まったが,長期耐用性は未知数であった.その中で英国Wrightington病院のCharnleyの仕事がきわめて先駆的かつ包括的であり,臨床成績を革新的に向上させた5,16,18).彼が着目した長期耐用性を獲得するための要素として,関節面に生じるトルクの減弱,材料の耐磨耗性の向上,骨との固定性の改善,感染対策,外科手術手技の改良などが挙げられる.本稿ではCharnleyの業績を基本とし,以後の改善と改悪の歴史について,長期耐用性を獲得するための要素別に述べる.
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