Japanese
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特集 C5麻痺の今
C5麻痺の疫学・経過とその原因—ドリル摩擦熱による神経障害
Nerve Injury Caused by Drill-induced Frictional Heat
山本 慎司
1
,
金 彪
2
Shinji YAMAMOTO
1
,
Phyo KIM
2
1大西脳神経外科病院脳神経外科
2獨協医科大学脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Ohnishi Neurological Center
キーワード:
神経障害(nerve injury)
,
ドリル(drill)
,
摩擦熱(frictional heat)
Keyword:
神経障害(nerve injury)
,
ドリル(drill)
,
摩擦熱(frictional heat)
pp.179-182
発行日 2017年3月25日
Published Date 2017/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200565
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はじめに
手術手技上明らかな問題を認めず,画像上も脊髄や神経根の十分な除圧を認めるにもかかわらず,術後数時間〜数日を経て遅発性に三角筋や上腕二頭筋などのC5髄節支配筋の筋力低下が出現する病態を従来より「C5麻痺」と呼称しているが,実際には筋力低下のみならず同髄節領域の感覚障害を伴うものや,C5以外にもC6〜T1髄節の運動感覚障害も発生し得る.片側のみならず両側に発生するものや,軽度の筋力低下のみ出現し数日で完全に回復するものから回復まで数カ月を要する重度のものまで症状内容もさまざまで,報告上の発生頻度は数%から10%程度に及ぶ.発生機序として,除圧後の脊髄移動・回旋に伴う神経根の牽引屈曲障害,radicular arteryの灌流変化に伴う脊髄および神経根の微小循環障害,脊髄除圧に伴う脊髄過灌流障害,ドリル摩擦熱による隣接神経組織の熱損傷などが従来より提唱されてきた.実際には,症例ごとに複数の機序が複合的に関与しているものと思われるが,本稿では神経組織の熱に対する脆弱性と,実際の脊椎脊髄手術におけるその危険性,摩擦熱対策の重要性を述べる.
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