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大学の大先輩である平林 洌先生が「日本脊椎脊髄病学会の歩み—申し継がれる先達の思い」とのタイトルで「Journal of Spine Research」第5巻に特別寄稿された別刷をいただいて,日本脊椎外科学会の創設から日本脊椎脊髄病学会に至る歴史を振り返り,脊椎外科の先達が取り組んできたテーマについて再確認する機会を得た.これらのテーマはいまだ結論が得られていないものも少なからずあるが,特に「instrumentationの功罪について」のタイトルではeditorや平林先生がinstrumentのさまざまな問題点について指摘している.そこで今回,自身のささやかな脊柱変形に対するinstrumentation surgeryを振り返るとともに,instrumentがもたらす利益と問題点について考えてみた.
著者は,国立村山療養所(現・独立行政法人国立病院機構村山医療センター)に昭和64年に赴任し,大谷 清先生に師事してから本格的にinstrumentation surgeryに取り組むこととなった.当時,大谷先生は脊柱変形矯正に対して後方はHarrington rod,前方はZielke VDS(ventral derotation system)を用いていた.ご存じのようにHarrington rodはPaul Harringtonによって開発されたシステムで,distraction rodとcompression rodの組み合わせで脊柱変形矯正,脊椎固定に用いられた.Compression rodはしばしば省略されることがあったが,従来のギプスによる矯正を併用した脊柱変形に対するin situ fusionに対して画期的な矯正効果をもたらした.しかし,主として伸展力による矯正,またanchorが頭尾側に限られるため,矯正効果は30〜40%程度にとどまること,またflat backによるsagittal alignmentの不良が長期経過で腰椎椎間板障害をきたして腰痛の原因となり,近年revision surgeryを行う機会が増えてきた.その後,Luqueによりrectangular rodとsublaminar wiringが開発され,sublaminar wiringがHarrington rodに併用されて矯正力,固定力とも向上し,またhookとrodとの連結の工夫などなされたが,flat backに対する根本的な解決法とはならなかった.
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