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はじめに
2018年度(平成30年度)の診療報酬改定において,特定集中治療室における「早期離床・リハビリテーション加算(500点/患者・日,14日上限)」が新設された.また,2022年度(令和4年度)には,特定集中治療室以外の治療室においても患者の入室後早期から離床に向けたリハ等の総合的な取り組みを行っている実態およびその効果を踏まえ,「救命救急入院料」,「ハイケアユニット入院医療管理料」,「脳卒中ケアユニット入院医療管理料」,「小児特定集中治療室管理料」においても本加算の追加対象とされ,その算定範囲が拡大された.これら新規加算の新設や対象範囲の拡大は,集中治療領域における早期リハの取り組みや有用性・有効性が評価されたものである.その加算算定の施設基準に新設当初から「作業療法士」の職名も明記されている.その背景には,集中治療室(intensive care unit:ICU)における作業療法の実績およびその必要性,今後の活躍に期待されているためと推察される.
ICUにおける早期リハの効果は,骨格筋や呼吸筋等,身体機能や生活の質(quality of life:QOL)を改善し,人工呼吸器離脱までの期間,在院日数,ICU在室日数を短縮すること等が示されている1).近年の集中治療における診断・治療技術の向上は目覚ましく,重症患者の救命率は大幅に向上している.それに伴い,生存患者の心身機能やADL,QOLが注目されるようになってきている.ICUに入室した重症患者は,長期におよぶ認知機能障害,身体機能障害,精神機能障害,日常生活動作障害等の問題を呈すことが指摘されている.それらの予防・改善に,ICU在室中の早期の段階からのリハ医療に重要な役割が期待されている.
本増刊号のテーマである「急性期の作業療法」において,ICUにおける作業療法は,どの疾患領域でも超急性期かつ最重症な時期である.生存患者の短期・長期的な機能予後を改善させるためにも,ICUに在室している超早期の段階からOTが関与することが期待される.一方で,救急・集中治療医学や生命維持装置・薬剤等に関する教育が,OTの養成課程で行われることはほぼなく,臨床の場で学ぶ機会が多いのも事実である.
そのため本稿では,ICUにおける作業療法の経験が少ない読者も考慮して,ICUと集中治療後症候群(post-intensive care syndrome:PICS)の概要,ICUにおける作業療法として,実践の実態,適応とリスク管理,役割,実践内容,有用性・有効性を概説し,症例を提示する.
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