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Assisting Hand Assessment(AHA)は,スウェーデンのカロリンスカ研究所のOTを中心とした研究グループによって開発された評価ツールである.脳性麻痺(cerebral palsy:CP)のリスクがある3〜12カ月の乳児の上肢の非対称性をスクリーニングする目的で開発されたHand Assessment for Infants(HAI),CPおよび腕神経叢損傷に伴う一側上肢障害がある8〜18カ月の子どもの補助手のパフォーマンスを診断するために開発されたMini-AHA,18カ月〜18歳を対象としたAHA18-18がある.その他,18カ月〜12歳までの両側性CP児を対象とし両手活動時の上肢使用の左右差を定量化するBoth Hands Assessment(BoHA),上肢に義肢や切断,脳卒中後の大人に対するツールも存在する.これら一連の関連するアセスメント群をAHA-familyと呼ぶ.
私は2010年にフランスでOTの国家資格を取得した.2020年にパリ公立病院連合アルモン・トルソー小児病院のリハビリテーション部作業療法科立ち上げプロジェクトのポストを得た際,整形外科部門の教授(医師)とリハビリテーション部長(医師)から,すぐにAHAの認定OTになるように依頼された.これを受け,Ellen Romein(OT,MSc,オランダ),Rachel Bard-Pondarré(OT,MSc,フランス),Susan Geraves(OT,PhD,オーストラリア)を講師として迎え,2021年に開催されたAHA18-18,Mini-AHAの講習会を受講したときの私の目は,好奇心とショックで大きく見開いていたと思う.AHAの基本概念と評価に無知であったということが,CP片麻痺の臨床・研究において根拠に基づいた作業療法(Evidence-Based Occupational Therapy:EBOT)を実践するうえでの大きな欠失だったと感じざるを得なかったからである.自身が日本のOT免許取得者としては初めてのAHA認定評価者となった一方で,2019年の日本作業療法士協会監修『作業療法ガイドライン脳性麻痺』にAHAの記載が一切なく,AHAを用いた日本語の学術論文が存在しないことも知った.
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