Japanese
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特集 疾患別 バランス障害に対する作業療法
姿勢制御における感覚情報の統合と可塑性
Integration of sensory information and plasticity for postural control
松田 滉平
1,2
,
村田 弓
1
,
肥後 範行
1
Kohei Matsuda
1,2
,
Yumi Murata
1
,
Noriyuki Higo
1
1国立研究開発法人産業技術総合研究所 人間情報インタラクション研究部門 ニューロリハビリテーション研究グループ
2筑波大学大学院 人間総合科学学術院 ニューロサイエンス学位プログラム
pp.392-395
発行日 2022年5月15日
Published Date 2022/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202955
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Key Questions
Q1:姿勢制御を構成する要素とは?
Q2:随意運動,歩行運動における姿勢制御の役割とは?
Q3:姿勢制御の可塑性とは?
姿勢制御の構成要素
姿勢の制御は,日常生活のほとんどの作業において必須の能力である.姿勢制御は,定位(orientation)と平衡(equilibrium)の2つの要素から構成される1).定位とは,身体の各部位の位置を他の部位や環境に適合させることであり,片足立ちをした際に足関節と股関節等が床面に対して垂直に配置されることを表す.一方,平衡とは,重心を支持基底面内に安定させる能力であり,これはつまり,外乱に対して能動的に抵抗することで身体のバランスを維持する能力ともいえる.
定位と平衡という2つの要素は不断な調節を必要とし,これには複数の感覚系が関連している.特に,前庭感覚,視覚,体性感覚は姿勢制御に不可欠であり2),これらの感覚情報が統合されることで,柔軟な姿勢制御を可能にしている(図 1).また,どの感覚情報が姿勢制御に動員されるかは外環境に依存する3).たとえば,丈夫で安定した床面に立っている場合は,姿勢定位を維持するために体性感覚情報に頼る傾向があるが,不安定な支持面の上にいる場合,前庭感覚情報と視覚情報への依存が強くなる.このように,周囲の環境に合わせて,それぞれの感覚情報は重み付け調整される.さらに,重み付けされた感覚情報は,運動野に起源をもつ内側運動制御系(前庭脊髄路,網様体脊髄路)を介して脊髄の運動ニューロン(神経細胞)を発火させる4).これにより末梢筋を制御し,身体は外環境に最適化される(図 2).
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