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はじめに
1958年(昭和33年)に父が始めた地域医療を1995年(平成7年)からそのまま引き継ぎ,現在自分流の地域医療を進めている.当院は宮崎空港(宮崎ブーゲンビリア空港)から約1km南の田園と団地の間に位置し,古くから住んでいる人々と県外から移住して来られた人々とのお付き合いが今日も続いている.
20年間の地域医療を通じて感じることは,近い将来地域が崩壊するのではないかと思われるほど急速に高齢化が進んでいることである.高齢者を支える若い人々も急速に少なくなっている.日中独居,老老介護はめずらしくない状況である.農業者も後継者がいないため80歳を過ぎても現役で農業を続けている.
このような地域で,現在76名(施設56名,在宅20名)の患者の訪問診療を行っている.1999年(平成11年)ころから施設の患者も診ることになり,その後徐々に施設の患者が増えている.訪問診療患者数はピーク時に120名を超えたが,医療スタッフの体調を考え,現在100名以下で調整している.
1995年6月〜2015年(平成27年)3月までの約20年間に,施設および在宅で看取った患者数は,確認できた範囲で347人であった.そのうち185人(53%)が在宅看取りであった.認知症の患者は347人中170人(49%)で,在宅看取りは170人中55人(32%)であった.悪性腫瘍の患者は347人中113人(33%)で,在宅看取りは113人中92人(81%)であった(表1).
悪性腫瘍の看取りは数カ月〜1年と短期決戦だが,認知症の看取りは,5〜6年と長期戦になるケースが多い.長いケースでは10年以上の方もいる.この結果から考えると,認知症の患者を家族が自宅で看取るのは多くの困難を伴うと思われる.
認知症が急増するこれからの地域医療についてどのように取り組んでいけばよいかを,20年間の事例を通して考えていく.
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