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書評 —伊関友伸(著)—「自治体病院の歴史—住民医療の歩みとこれから」
江藤 文夫
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1国立障害者リハビリテーションセンター
pp.1326
発行日 2014年12月15日
Published Date 2014/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200079
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自治体病院は地方公共団体が経営する医療機関で,地域における基幹病院として,へき地医療を含めて民間病院では採算性が確保されないような困難な医療を担ってきた.しかし,経営効率が優先される今の時代に「自治体病院の存在意義」を議論するためには,その誕生の経緯や果たしてきた役割を踏まえることが必要である.歴史は,物事の始まりを記録するものであり,それにより未来を指向する議論に資することができる.伊関氏は,膨大な資料に基づき自治体病院の歴史をまとめることで住民医療の将来を構築するための貴重な資料を提供した.
通読しながら,なるほどと今になって気づく個人的な思い出があった.医師資格を取得して間もない昭和40年代の末に,長野県の佐久総合病院を見学した.それとは別に,東大病院第3内科での研修歴の縁で,浅間病院で1週間ちょっと病棟の手伝いを要請され,病院に寝泊まりしたことがある.あさま山荘事件の余韻が残るころであった.前者がJA厚生連,後者が国保直診の医療施設であることを知らず,関心もなかった.佐久を名乗っても前者は佐久市(当時)にはなく,後者が佐久市立であることを興味深く感じただけであった.
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