提言
認知症のある人の人権と意思
駒井 由起子
1
Yukiko Komai
1
1いきいき福祉ネットワークセンター
pp.1276-1277
発行日 2014年12月15日
Published Date 2014/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200064
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認知症のあるAさんの突然の行動に……
私の勤務する職場で,東京都が設置した若年性認知症の本人・家族・関係機関から相談を受ける「東京都若年性認知症総合支援センター」の委託事業を開始して2年半が経過した.私自身は若年性認知症支援コーディネーターとして,「もの忘れする,認知症かもしれない」という不安をもつ本人の相談に応じたり,「社員が認知症になり,どんな仕事ができるのか教えてほしい」という問い合わせに対して,勤務先の人事担当者や産業医と業務内容を一緒に検討したり,「デイサービスに行くと排泄がうまくできない」という家族からの相談によって,通所先のデイサービスへ訪問する日常になり,一般的にイメージされる作業療法とはかけ離れたような業務を日々行っている.
前頭側頭型認知症のAさんは,「道を歩いていて,突然前にいた女性の頭を紙袋で叩いた」という訴えで警察に一時的に拘束された.連絡を受けた家族がAさんは認知症であると話したものの,「認知症だから許されることではない.家族が管理してください,管理できないなら入院させてください」と警官に注意された.Aさんは子どものしつけにも熱心な方であり,家族は「今まで真面目に生きてきたのに,これからどうすればいいのか」と途方に暮れて相談に訪れた.会社を休職になって数日後の出来事であり,介護サービスも導入されておらず,妻は常時付き添う必要性を感じていなかったであろうし,実際親の介護もあり物理的にも24時間管理は難しい状況であった.私が仕事として認知症の方にかかわって約20年が過ぎたが,あらためて認知症のある人の人権と保護監督責任について考えさせられた出来事であった.
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