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書評 ―田島明子(著)―「日本における作業療法の現代史―対象者の「存在を肯定する」作業療法学の構築に向けて」
京極 真
1
1吉備国際大学
pp.1052
発行日 2014年9月15日
Published Date 2014/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100651
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著者は,『私的所有論』等の大著で名高い立岩真也氏のもとで研鑽を積み,2011年(平成23年)に博士号を授与された新進気鋭の作業療法学者である.本書は,著者の博士論文に加筆・修正を加えたものであり,非常に刺激的な論考を膨大な先行研究とともに展開している.読者は著者の実力に驚嘆するとともに,知的冒険に血湧き肉躍る体験をするだろうと思う.
本書の独創と意義は,作業療法の現代史の検討から,この領域が暗黙のうちに依拠する前提と矛盾を浮きぼりにしたうえで,「存在の肯定」という命題を提出しているところにある,と考えられる.この命題は,従来の作業療法が対象者の「適応」を目指すあまり,対象者の「できること」と対象者の「価値」が結びついてしまい,対象者が存在すること自体の価値を劣位に置いてしまうことに対する反省から導出されている(第1章,第6章).著者は,第2~5章の作業療法現代史の検討を通して,対象者の存在価値が劣位に置かれる理路を丹念に議論している.
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