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はじめに
クラインフォーゲルバッハの運動学(以下,本運動学)は日本語では機能的運動力学1)と訳され,PTであるSusanne Klein-Vogelbach女史によって提唱された運動学である.Klein-Vogelbachはスイスのバーゼル州立病院勤務のかたわら1955~1974年(昭和30~49年)までPTの養成校の校長を勤め,バーゼル大学から理学療法分野における分析的研究に対し名誉学士を授与されている1).
本運動学は力学的概念を取り入れた運動分析の方法を具体的に提示しているのが特徴である.スイスボールの著者であるCarrière2)は,本運動学を「人間の運動を観察し,分析し,患者に運動を指導することが根底にある」とも述べている.本運動学は,1986年(昭和61年),スイスでその教えを学んだ冨田昌夫氏により日本で紹介された.その後,氏による臨床動作分析研究会で培われ,臨床の場で応用されてきた.冨田3)は本運動学について「臨床の場で理解しにくかった拮抗するものの見方,つまり動きの伝播に対する動きの静止,可動に対する安定を重視するところに女史の運動学の特徴があると思われる」と述べ,提唱するに至った目的として「運動分析を容易にし,情報交換をしやすくするため」としている.実際に本運動学では,筋の活動様式や平衡反応がわかりやすく区分して紹介されている4).
本稿の目的は,本運動学の基本的な概念や用語を紹介し,過去の文献への足掛かりとすること.また,本運動学を通して,OTが作業活動や日常生活動作の分析を行う際に抱く印象の背景にある運動学的視点を知り,治療やその後の変化をとらえやすくすることである.
基本用語の説明および座位姿勢とリーチ動作を通してその内容を提示したい.
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