講座 作業療法のための薬の知識・第2回
循環器疾患治療薬
秋下 雅弘
1
Masahiro Akishita
1
1東京大学大学院(老年病学)
pp.442-446
発行日 2013年5月15日
Published Date 2013/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100117
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はじめに
高齢患者は循環器疾患の合併率が高く,したがって循環器薬の服用も多い.図1に大学病院老年科5施設の外来患者調査を示すが1),循環器疾患(高血圧含む)の保有率は61.5%と最も高く,脳神経疾患(脳血管疾患含む),消化器疾患,内分泌代謝疾患がそれに続いた.一方,さまざまな要因により高齢者では薬物有害作用の出現率が一般成人に比べて高いが,高齢入院患者にみられた薬物有害作用のうち循環器薬によるものが1/3以上を占めたことも報告されている(図22)).したがって,循環器薬の有効で安全な使用法を修得することは,高齢者診療の必須事項ともいえる.『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2005』(日本老年医学会編)3)には,「高齢者で特に慎重な投与を要する薬物のリスト」に降圧薬を含む9種類が掲載されており(表),薬剤選択の参考にできる.本稿では,このガイドラインの内容を中心に,循環器薬を高齢者で安全に使用するための注意点について,病態別に解説する.
この領域で問題となる疾患は,高血圧,心不全,虚血性心疾患,不整脈,閉塞性動脈硬化症であり,それらに対する治療薬として,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),カルシウム拮抗薬(CCB),利尿薬,β遮断薬,強心薬,抗血栓薬(抗血小板薬,抗凝固薬),血管拡張薬,抗不整脈薬等が用いられる.
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