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腹腔鏡下手術が今日のように広く普及した切っ掛けの一つに,1978年にイギリスで成功した“体外受精”第一号で誕生したルイーズちゃんのことが挙げられます.それまで卵管の障害で妊娠が絶望的であったものが,腹腔鏡で卵巣から採取した卵と精子とを培養器内で受精させ,その受精卵を子宮内に移植することで,カップル間の子供を宿すことを可能にした画期的な出来事でした.当時は“試験管ベビー”と呼ばれたりもしました.その彼女も28年後の2006年12月に自然妊娠で母親となりました.国内での体外受精第一号は,遅れること5年後の1983年でした.生殖医療の進歩・発展は目覚しく,国内でも,1999年には出生数1,177,670人に対し体外受精出生数が11,119人(0.94%)と1万人を超え,その後も年々増加し,2006年には出生数1,092,670人に対し19,578人(1.79%)と,実に55人に1人がその恩恵を受けているのが現状です(資料:出生数は厚生労働省「人口動態統計」,体外受精出生数は日本産婦人科協会報告より).
“体外受精”当初の腹腔鏡は,術者1人が直接接眼レンズを通して観察するもので,他の関係者の観察には,接眼部に別のスコープを接続して見るものでした.この成功の背景には,1980にはいり腹腔鏡下に虫垂切除術をしたドイツの婦人科医Semmの業績がありました.しかし,1985年以降は,経腟超音波下での採卵法が開発され,腹腔鏡の出番はなくなりました.一方,その頃にCCDカメラや光学機器の開発でスタッフ全員が術者と同じ映像を共有できるシステムが登場.1987年にはフランスの婦人科医でもあるMouretによる腹腔鏡下胆囊摘出術につながりました.手術界の大革命の幕開けとして,1990年前後から全世界の外科医が腹腔鏡下手術の可能性に向かって突き進み,国内でも2007年には年間10万件を超えるに至っております(日鏡外会誌13:500,2008).
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