特集 コマネジメント
Part 2 コマネジメントの“枝”
10.せん妄—せん妄は内科疾患であり,予防には多職種協働・コマネジメントが鍵となる
田川 哲也
1,2
,
関口 健二
1,2
Tetsuya TAGAWA
1,2
,
Kenji SEKIGUCHI
1,2
1市立大町総合病院 内科
2信州大学医学部附属病院総合診療科
pp.143-153
発行日 2023年9月1日
Published Date 2023/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103901109
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せん妄は,どの診療科の誰もが遭遇する代表的な入院合併症である。その対策には,リスク評価,予防,診断,管理のすべてに包括的なアプローチを要するがゆえに,外科領域の専門科と内科医やホスピタリストとのコマネジメントにおいて,欠かすことのできないトピックである。
そしてせん妄の対策において重要であるのは,「せん妄が精神疾患ではなく,内科疾患である」という認識である。今日,超高齢社会により外科病棟やICUにおいても高齢者の割合が高くなり,血圧や血糖値の異常と同じ頻度でせん妄が発症する可能性がある。せん妄の発症率低減,診断率の向上をはかるには包括的な周術期管理が必要である1)。特に手術は,高齢者にとってせん妄を引き起こす可能性が高く,術後せん妄の発症は状態悪化や死亡率の大幅な上昇,医療資源支出の増加と関連している2〜8)。
せん妄の予防は大切だが,外科などの専門科は多忙であり,そこに時間を費やすことが困難な可能性もある。とはいえ,現状は待ったなしである。せん妄の予防に多職種協働・コマネジメントが鍵となることが,いくつかの観察研究データで示されている9〜11)。本稿では,せん妄のリスク評価,予防,早期診断,発症した場合の対応について,外科などの専門科や,看護師,リハビリテーションスタッフ,薬剤師などの多職種と,どのような認識,対策を共有すべきかについて解説する。
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