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高齢化に伴い心不全患者は増加している1)。器質的心疾患に基づく低左心機能を背景とする心不全は,治癒する病態ではなく,一度発症したら,入退院を繰り返しながら進行性に増悪し,死に至る予後不良の病態である1)。心不全入院回数が多いほど,生命予後は不良である2)。心不全パンデミックと表現される近年の臨床現場の状況は,単に高齢人口の増加に伴う心不全罹患率の増加という「時間軸に横断的な」側面のみならず,個々の症例が終末期に至るまで,経時的に複数回の入院治療を必要とするという「時間軸に縦断的な」側面をも反映している。このような状況において,循環器内科医のみで個々の症例に適切な心不全治療を提供し,かつその後の経過をみていくことには,限界があるだろう。実際,循環器内科医に限らず,多くの内科医はすでに心不全診療に従事しているのであり,病診連携も含め,職域や専門科の枠組みを越えた,チーム医療の必要性が認識されている。
しかしながら,実は“心不全”というのは多様で漠然とした病態概念である。適切なチーム医療を提供するためには,単に“心不全”患者,という認識ではなく,個々の患者の正確な基礎疾患の把握と情報共有が必要だろう。その目的のために,本稿では,循環器専門医の視点から,心不全の原因疾患や,その鑑別について概略を記載する。あらゆる心不全の鑑別疾患を稀少疾患に至るまで網羅的に詳述することが本稿の目的ではない。目の前の心不全患者に対するチーム医療の一翼を担う先生方やスタッフにとって,実臨床に役立つ“心不全”の概念構築や整理に,いくらかでもお役に立てるとしたら幸いである。さらに,我々循環器専門医が“心不全”をみる際の臨床姿勢も共有していただければ,望外の喜びである。
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