特集 感染症
15.軟部組織感染症—蜂窩織炎と壊死性筋膜炎で考えるストラテジー
馳 亮太
1
Ryota HASE
1
1亀田総合病院 総合診療・感染症科
pp.295-303
発行日 2013年12月1日
Published Date 2013/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900439
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■病歴でどのように起因菌を 予想するか?
皮膚軟部組織感染症は,各種培養検査で起因菌が正確に特定できないことが多く,経験的な治療に頼らざるを得ない場合が大半である。Hookら1)は,50人の蜂窩織炎患者の全員で,血液,侵入門戸と予想される部位の皮膚,針吸引液,パンチ生検の培養を提出し積極的に起因菌を検索したが,菌を検出できたのは13人のみで,そのうち12人で,黄色ブドウ球菌とβ溶血性レンサ球菌を検出したと報告している。またJengら2)は,培養で起因菌が判明しなかった蜂窩織炎患者179人のうち,73%でβ溶血性レンサ球菌が原因であったと述べている。丹毒に関しては,Erikssonら3)が,丹毒と診断した229人の患者のうち,34%がβ溶血性レンサ球菌が原因であったと述べている。これら過去の研究から,蜂窩織炎や丹毒を含む一般的な皮膚軟部組織感染症を治療する場合には,起因菌としてレンサ球菌(Streptococcus)とブドウ球菌(Staphylococcus)を想定した治療を行う。
他の起因菌が関与している可能性を考えるためには,的を絞った情報収集が必要である。具体的には,患者の免疫状態,病変部位,水,植物,動物への曝露に関する情報を収集する。収集すべき情報のキーワードと想起すべき病原体を表1に示す。有用な情報が収集できた場合には,その情報に関連した病原微生物を想起すべきである。しかしながら,最も頻度の高いレンサ球菌とブドウ球菌の可能性が消えるわけではないので,“Common is common”という概念も大切である。
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