特集 腎疾患
【慢性腎臓病(CKD)】
【コラム】腎移植後の感染症—移植に伴う免疫抑制と好発感染症の理解
森川 大樹
1
,
藤谷 茂樹
2,3
Daiki MORIKAWA
1
,
Shigeki FUJITANI
2,3
1東京ベイ・浦安市川医療センター 総合内科
2東京ベイ・浦安市川医療センター
3聖マリアンナ医科大学 救急医学
pp.233-241
発行日 2014年3月1日
Published Date 2014/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900413
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腎移植後の感染症
腎移植後の感染症には,尿路感染症(47%),ウイルス感染症(17%),肺炎(8%),創部感染(7%),菌血症(6%)などがある1)。なかでも尿路感染症urinary tract infection(UTI)の頻度が高い2)。移植後3年以内に半分以上の腎移植患者でUTIが報告されている3)。多くは膀胱炎であるが,Giralら4)によると,13%は腎盂腎炎であった。以前は,UTIの半分の原因は尿管吻合部からの漏れや腎周囲血腫など技術的な問題だったが,最近の手術手技の向上により技術的な問題は減少している。しかし,それでも依然UTIの発生率は高い2)。このUTIの起因菌としては,大腸菌,腸球菌,カンジダ属が代表的なものである5)。Mycoplasma hominisは吻合部の吻合不全を起こす5)。Corynebacterium urealyticumは腎移植後の閉塞性腎症の原因となる6)。BKウイルス(BKV)はポリオーマウイルスの一種であり,腎移植後の感染性腎障害の重要病原体であり,後に詳細を記載する。
また,腎移植患者の25〜30%が肺炎となっており,死因の最も大きな原因となっている7)。かつてはCytomegalovirus(CMV)や真菌,ノカルジア,ニューモシスチスなどによる日和見感染が,細菌性肺炎よりも頻度が高かったが,最近ではCMVや日和見感染のコントロールがついてきていることもあり,相対的に細菌性肺炎の頻度が上昇している8, 9)。ただし,CMV肺炎はいまだに移植後に頻繁にみられる感染症であり,今でも重要な病原体の1つである。
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