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内科医として,手術を受ける自分の患者にできることは,①的確なリスク評価と,②手術までにリスクを下げるための介入である。非心臓手術の死亡率は1%前後であるが,その原因の約半数が心疾患である1〜3)。つまり,術前評価として,循環器リスク評価は非常に重要である。しかも「手術まで」が条件であり,その期間内にすべてを完了,もしくは手術の延期を要請する必要がある。
①のリスク評価は,漫然と精査をすればいいのではない。患者ごとに,どこまで精査すべきかを判断し,手術までの日程から逆算しながら行わなければならない。しかし,これに関しては豊富なエビデンスをもとにガイドラインに明確に示されており,問診・診察からステップワイズアプローチに従って必要な検査を行えば,比較的容易に評価可能となる。
問題は②の介入である。例えば,術前精査にて安定狭心症と診断されたとする。2泊3日の入院,手技時間30分で冠動脈ステントを留置して治療を完了させ,安全に手術を受けてもらえる……のであろうか? ステント留置により,2剤の抗血小板薬を内服しなければならないという問題が生じる。継続したまま手術を受ければ出血のリスクが高まり,中止すればステント血栓症のリスクが高まる。また,手術が延期されれば原疾患が進行してしまう可能性もある。
では,どのように介入すれば予後を改善させることができるのか? この問いに明確な答えを出してくれるエビデンスは存在しない。原疾患,患者背景,手術手技,周術期管理方法など,あまりにもさまざまな因子が関与し,時代とともに変化している*1ためである。
本稿では,実際の症例をもとに,術前のリスク評価の方法,および現時点で妥当と思われる介入方法について解説する。
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