- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
■COVID-19時代に,薬物の有効性と安全性を考える
薬理学に明確な定義はないが,薬理学のゴールドスタンダードと言われている1941年が初版の“Goodman & Gilman's the Pharmacological Basis of Therapeutics”は以下のような文章で始まる。「薬理学の主題は広範囲なものであり,薬物の源泉,物理的および化学的特質,配合,生理作用,吸収,体内運命,排泄,ならびに薬物の治療的用途に関する知識を包含する」と1)。2013年に出版された第12版では,薬力学pharmacodynamics(PD),薬物動態pharmacokinetics(PK),薬理遺伝学pharmacogeneticsを探求することで,これらの定義を補強すると記載している。つまり,薬物に関する極めて広範囲の領域を対象としている学問である。
この1年間,世界中で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬の候補が検討されてきた。今までの臨床試験(治験)のように開発に長期間をかけるのではなく,迅速さが求められる状況となり,改めて「薬理学」の重要性を確認することとなった。しかしながら,in vitro試験でCOVID-19に対する抗ウイルス作用が確認されても,臨床試験では有効性が示されないなど,作用機序だけで薬物の有効性を考えることのリスクも感じたのではないだろうか。実際の臨床でも大規模臨床試験のエビデンスが少ない状況で臨床的な判断が求められる場合に,改めてICUにおける薬理学を再考することは,投与の判断やモニタリングの一助となるだろう。また,COVID-19の治療薬やワクチンの開発が注目を集めていることを踏まえて,医薬品の承認申請についても解説する。
Copyright © 2021, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.