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SATAについて
米国ではOPTN(Organ Procurement and Transplantation Network)の資料によると,2018年度341施設,36529件(脳死ならびに心臓死移植29680件,生体移植6849件)の移植が行われており,またこの移植数は年々増加傾向にあります。これに伴い,移植医療に携わる麻酔・集中治療医数も著明な増加傾向を示しています。これにより(1)情報の共有や研究を通して診療の質を確保すること,(2)現場の麻酔・集中治療医の声を移植の実際に反映させることができるような組織作りが必要となりました。そこで,移植麻酔・集中治療の診療情報交換,臨床ガイドラインの策定,研究,および教育を主な目的として米国で初めて結成されたのが,Society for the Advancement of Transplant Anesthesia(SATA)です。結成は2011年と比較的新しい移植麻酔・集中治療医のための学会ですが,年々会員数は増加しています。総会は,3年前から毎年1回,5月に国際麻酔学研究会議International Anesthesia Research Society(IARS)と合同で開催されております。
移植件数の増加のみならず,米国では2013年から,ドナーを地域の移植施設間で分配するというシェア35ルール*1が導入されました。これにより地域ごとの移植情報の交換と連携の重要性が増しました。このような背景があり,SATAでは総会のみならず,地域の移植施設の情報交換と交流の促進を目的として,ニューヨーク,テキサス,そして西海岸などで地方集会を幅広く開催し,地域に根ざした移植麻酔医療の推進にも大きく貢献しています。最近では,アジア地域の移植麻酔・集中治療学会とも積極的に連携し,世界を代表する移植麻酔学会へと短期間で成長してきました。総会では,ドナー管理から,臓器移植の周術期管理までさまざまなテーマが取り上げられ,臨床的な視点が,他の学会では類を見ないほど多彩な分野に及びます。さらに,その分野の第一人者による講演,各移植施設からの代表者がパネリストに名を連ね,施設間の診療方針の違いなどについて積極的な意見交換が行われるなど,半日にしては非常に内容の濃い,魅力的なプログラムになっています。今回私は,2019年5月21日にカナダのモントリオールで開催された第3回SATA年次総会に参加しました(図1)。
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