特集 中毒
Part 3 中毒の集中治療
4.リチウム中毒
小松 孝行
1
,
内山 宗人
2
Takayuki KOMATSU
1
,
Munehito UCHIYAMA
2
1順天堂大学医学部附属練馬病院 救急・集中治療科
2横浜市立大学医学研究科 救急医学
pp.691-700
発行日 2017年7月1日
Published Date 2017/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200429
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リチウムは1817年にペタライトと呼ばれる鉱石を分析したArfwedsonによって発見され,ギリシャ語で石を意味する「lithos」から名づけられた1,2)。1855年にBrandeにより分離され1),商業的に生成されたのは1923年である3)。治療への応用の歴史はそれより古く,約1800年前にGalenが,躁病の患者をリチウムの含まれるアルカリ泉に浸し,その水を摂取させることで治療したとされる1)。リチウム中毒は急性,慢性そしてacute on chronicの3つに分類され,それぞれの中毒症状は特徴的な薬物動態によって説明される4)。本稿では,リチウムの薬物動態とそれに基づいた治療に関して概説する。
Summary
●Li+はNa+チャネルによって細胞内に取り込まれ,細胞内シグナル伝達経路の異常をきたすため,あらゆる臓器の細胞を障害する。
●急性,慢性,acute on chronicの中毒が問題となる。
●急性中毒の場合は,血中濃度ではなく臨床症状を見て治療する。
●慢性中毒では血中濃度と臨床症状が相関するが,すでに起こった細胞障害による症状が血中濃度低下後も遷延することがある。
●血液透析が有効だが,血中濃度の再上昇があることに留意する。
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