- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
飲み薬がメインであったかつての医療と異なり,現代医療では治療に“管”は必須のもので,医療と管はまさに切っても切れない関係となっている。ちょっと前には“スパゲッティー症候群”などと,管だらけの行き過ぎた治療を揶揄する言葉もあった。本特集では,管のうちドレーンと称するものを扱っていくが,この“ドレーン”という用語は,ドレナージの担い手となる管自体を指して言う場合もあれば,ドレナージする(されている)という行為や状態を指すこともある。我々が日常診療で「ドレーン」と言うとき,多くの場合にはデバイスとしての管が存在するが,管のない状態としてのドレーンもある(瘻孔など)。
ドレーン(drain)という言葉はdry(乾かす)と同じ語源からきており,意味はmake dry(乾燥する=水を取り除く)というところから始まっている。現在の使われ方としては,pour money down the drain(お金をどぶに捨てる)のように“排水管(排水溝)”を意味することが多く,日常用語でも医療用語でも,なにか“汚いものを流す”こと,もしくは“そのための通り道”としての意味が定着しているようだ。
類似した言葉に“カテーテル”(英語:catheter,独語:katheter)がある。語源としては,kathienai(kate=下に,hienai=送る)とされ,医療では導尿を目的として膀胱へ送り込む細い管を意味するようになった。現在は血管内に用いる管を称していることが多い。ドレーンが内容物の排泄,もしくはその目的で(すでに)挿入されている管を意味するのに対して,カテーテルは(目的の位置に)入れる管そのものを意味している。したがって,ドレーンとカテーテルは単に視点が違うだけで,尿を出すという同じ行為に対しても,出すことを主眼にした場合は「尿道ドレーン」と言い,尿を出すために入れる管にフォーカスした場合は「尿道カテーテル」と言ったりする。ただし,ドレーンとは異なり,管が存在しない場合にカテーテルという語が用いられることはなく,血管内に用いるものなど,専ら体内に薬物などを入れることのみに使用される場合もある。
Copyright © 2016, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.