特集 心臓血管外科 前編
術式別に学ぶ心臓血管手術:弁膜症と不整脈
4.三尖弁手術
岡本 一真
1
Kazuma OKAMOTO
1
1慶應義塾大学 心臓血管外科
pp.747-753
発行日 2015年10月1日
Published Date 2015/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200215
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
三尖弁における弁膜症は原発性と二次性に分類できるが,原発性三尖弁疾患はまれである。原発性の三尖弁逆流tricuspid regurgitation(TR)の要因は,先天性もしくは後天性の弁尖や腱索などの異常のほかに,ペースメーカリードや外傷,感染性心内膜炎などが挙げられる。対して,臨床的に問題になる頻度が高いのは,左心系の疾患,特に僧帽弁閉鎖不全あるいは僧帽弁狭窄を原因とする肺高血圧pulmonary hypertension(逆流PH)と右室機能障害に伴う二次性TRである。2012年の日本胸部外科学会による調査1)では,三尖弁単独手術は年間312件と弁膜症手術総数の1.5%にすぎず,併施された三尖弁手術は4828件で大半は僧帽弁手術に併施された。また,2000年の調査2)と比較して三尖弁単独手術は1.7倍,併施手術は2.6倍に増加していた。
Summary
●近年,二次性三尖弁逆流に対する外科的介入を積極的に行う傾向にある。
●二次性三尖弁逆流は,中隔側から外側に進行する弁輪拡大に伴い弁尖の接合が悪くなるために発生する。
●左心系弁膜症手術の際に,mildあるいはmoderate TRでも弁輪拡大があれば三尖弁へ介入すべきである。
●partialリングによるring annuloplastyが治療の主体となる。
●重症三尖弁閉鎖不全に対する手術は高リスクであり,うっ血性肝障害などの併存症のため,術後は高度な集中管理を要する。
Copyright © 2015, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.