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褐色細胞腫は,副腎髄質あるいは副腎外の傍神経節細胞に発生するクロム親和性細胞に由来し,カテコールアミンを産生する神経内分泌腫瘍である。WHO分類では,副腎髄質に発生するものを「褐色細胞腫」,副腎外の交感神経系や副交感神経系由来の傍神経節細胞腫は「副腎外パラガングリオーマ」と定義しており,その頻度は褐色細胞腫が80〜85%,副腎外パラガングリオーマが15〜20%1)と報告されている。
以前は,我が国の高血圧患者10万人に対して1.4人程度でまれとされていたが,診断技術の進歩により診断例は増加している。海外の報告では,現在は高血圧患者全体の0.2〜0.6%程度と推定されている2〜5)。また,画像診断の普及により,偶発的に発見された副腎腫瘍を契機に褐色細胞腫と診断される例も増加してきている。副腎偶発腫瘍の約半数以上は非機能性副腎腺腫であるが,機能性腫瘍のなかで褐色細胞腫は8.5%と,コルチゾール産生腫瘍に次いで2番目に多い。また,褐色細胞腫の約25%は副腎偶発腫瘍を契機に診断されている6,7)ことからも,日常診療で十分に遭遇し得る疾患であるといえる。
副腎偶発腫瘍から褐色細胞腫を診断することはさほど困難ではないと思われるが,事前情報なしに救急外来にクリーゼあるいはそれに近い状態で搬送されてきた患者をいかに適切に診断に導くかが鍵といえる。
Summary
●褐色細胞腫は副腎髄質あるいは副腎外の傍神経節細胞に発生し,カテコールアミンを産生する神経内分泌腫瘍である。
●ERやICUで中等度以上の循環血漿量減少を伴う難治性や発作性の高血圧や頻脈,秒〜分単位で血圧や脈拍の不安定な変動は,クリーゼを疑うヒントとなる。
●重症患者では高カテコールアミン血症を呈することはまれではない。機能検査は複数回実施し,同時に必ず画像検査を行い,腫瘍の局在を含めた総合的な判断が重要である。
●重症例を含め画像検査はCTが第一選択である。患者の病状や施設ごとに実施可能な検査は異なるが,MRI,123I-MIBGシンチグラフィ,18FDG-PETも診断に有用である。
●悪性例を除き腫瘍摘出が原則であるが,細胞外液補充やα1受容体拮抗薬を柱とする内科的治療が特に重要で,これにより周術期リスクを大幅に軽減することができる。
●クリーゼ誘発のリスクから,褐色細胞腫が疑われる例に対するステロイドやメトクロプラミドなどの薬物の使用には注意が必要である。
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