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ICUにおいて必要な微生物学的知識とは何か。感染症の診断とは,患者自身の生体システムの異常を捉えるのではなく,患者の体に侵入してきた病原微生物を捉えることにほかならない。
微生物学的検査は“人”がかかわる部分が大きい。検体提出の時点から,採取する“人”のテクニックが結果に大きな影響を及ぼす。検査の過程においては,塗抹検査は観察者の熟練度が検査の精度に影響する。培養においても,多数の雑菌のなかから病原微生物と思われる菌を拾い出し同定するのは“人”の目である。このため,検査を行う“人”の熟練度が結果の精度に影響する。また,どの微生物を狙うかで検査の方法論が変わる場合がある。臨床情報が必要であり,具体的に想定している病原微生物の情報を検査室に提供することが,早く正確な結果を得るために重要である。検査技師と医師のコミュニケーションがこの問題を解決する。医師から技師へ臨床情報を提供することはもちろん,技師から医師への質問が許容される雰囲気が検査室の能力を上げるために不可欠である。
ICUでは少しでも早く有用な情報を得ることが適切な治療方針の立案に重要と思われるが,細菌培養検査は最終結果が報告されるまで数日かかる。実際には検査の過程でも微生物に関する情報は次第に明らかになっているが,確定するまではその情報が検査室から発信されることは少ない。微生物検査の行程を理解すれば,検査の途中でも有用な情報が得られるタイミングを知ることができる。
本稿では,はじめに細菌検査の流れを解説し,どの段階でどのような情報を引き出すことが可能かについて述べ,その後に,検査室から得られた情報を理解するための微生物学的知識について解説する。
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