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心室性不整脈には,心室性期外収縮(PVC),心室固有調律 idioventricular rhythm,心室頻拍(VT),心室細動(VF)などがある。心室由来の不整脈は12誘導心電図でP波と連結しない,wide QRS complex(幅の広いQRS複合)を見つけることで診断できる。しかし,wide QRS complexが必ずしも心室性不整脈ではなく,上室性由来の調律でも変行伝導aberrancyなどの特殊状況下でwide QRS complex になりえる。変行伝導は,His-Purkinje系(通常は右脚)がまだ相対不応期を脱しないうちに次の刺激が到達して生じる生理的な脚ブロックである。一般的に,上室性頻拍(SVT)に比べ,心室頻拍は血行動態に与える影響が大きく,心室細動,心停止へと移行する可能性も高い。しかし,上室性頻拍はいつも「良性」ではなく,心拍数が十分速くなれば(例えば,250bpm以上)心拍出量減少を引き起こし,動悸のほかに,ふらつき,めまい,失神などの症状が生じる。一方,心室頻拍がいつも重篤な症状を伴うわけでなく,心拍数150bpm以下の,いわゆるslow VTの場合は,患者本人にまったく自覚症状のない場合もある。
このように,心拍数や症状のみからの上室性頻拍と心室頻拍の鑑別はほぼ不可能であるが,上室性頻拍と心室頻拍では治療法と予後が異なるため,2つの頻拍の鑑別は重要である。鑑別不能な場合は電気生理検査(EPS)に頼るしかないが,病歴,身体所見,12誘導心電図の組み合わせで正しい診断に近づくことが可能である。本稿では,心室頻拍の治療根拠となる診断方法,種類,また心室頻拍を引き起こす特殊な病態について説明する。
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