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■症例
0歳5か月の男児。身長58cm,体重4500g。胎児期に心室中隔欠損症(VSD)を指摘された。在胎39週3日に自然分娩で出生し,身長48cm,体重2845gであった。出生時に先天性食道閉鎖(C型)を認め,食道閉鎖根治術が行われた。生後3か月頃から体重増加は緩慢になり,その後多呼吸や陥没呼吸が出現するようになった。心臓超音波検査では,心内奇形はVSDのみ,欠損孔の位置は傍膜様部,大きさは6mm,左右シャントであった。心臓カテーテル検査では,左室圧79/12mmHg,右室圧51/8mmHg,肺動脈圧47/17mmHg,肺体血流量比3.8,右室拡張末期容積153% of normalであった。高肺血流により肺高血圧症をきたしているため,VSD閉鎖術が予定された。
■麻酔経過
セボフルランで緩徐導入し,末梢静脈路を確保した。ロクロニウムとフェンタニルを投与して内径3.5mmカフ付き気管チューブを経口挿管した。カフ圧10cmH2Oでエアリークはなかった。マスク換気,挿管は容易であった。挿管後に気管支鏡で観察したところ,気管分岐部から約2cm口側の膜様部で気管食道瘻tracheo-esophageal fistula(TEF)の修復部位が憩室様となっていた。そのため,気管チューブの固定位置は先端を気管分岐部から約1cm口側にして,右口角で10cmとした。また,気管および左右主気管支の内腔はやや扁平化していた。
人工呼吸器の設定を吸入酸素濃度(FIO2)0.21,吸気圧18cmH2O,呼気終末陽圧(PEEP)6cmH2O,呼吸数20回/min,吸気時間1.2秒として,経皮的末梢動脈血酸素飽和度(SpO2)98%,呼気終末二酸化炭素分圧(PETCO2)42mmHgであった。セボフルラン,ロクロニウム,フェンタニルで麻酔を維持し,右橈骨動脈に動脈カテーテル,右内頸静脈に中心静脈カテーテルを挿入した。手術開始前に経食道心エコー検査(TEE)で評価したが,プローブ挿入時に気道内圧や1回換気量は変化しなかった。TEE評価後に患者の背中の下に枕を入れて胸を反らし,さらに顔を左側に向け頸部を後屈する手術体位を作成した(図1a,b)。
手術が開始され,胸骨を正中切開していると突然1回換気量が低下し,SpO2が70%になった。吸引を試みたところ,気管内からは何も吸引されなかったがSpO2は改善した。胸骨切開後,開胸器で胸骨間を広げた直後に再びSpO2が低下した。SpO2は改善しないまま高度徐脈になった。直ちにFIO2 1.0で用手換気をしたところ気道内圧が高値のアラームが鳴った。
さて,あなたならどうする?
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