症例カンファレンス
HOT導入患者の乳房部分切除術
水谷 光
1
,
竹郷 笑子
2
,
川越 いづみ
2
,
大越 有一
3
,
横井 信哉
4
Emiko TAKEGO
2
,
Izumi KAWAGOE
2
,
Yuichi OHGOSHI
3
,
Nobuya YOKOI
4
1大阪労災病院 麻酔科・中央材料室
2順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座
3けいゆう病院 麻酔科
4島根大学医学部附属病院 麻酔科
pp.517-533
発行日 2019年6月1日
Published Date 2019/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201394
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重症の慢性呼吸不全のために在宅酸素療法home oxygen therapy(HOT)を導入された患者が増えている。そんな患者の手術の麻酔を担当することは,珍しくなくなった。これらの患者は,呼吸機能に予備能が乏しいどころか,平常時でも呼吸機能は低下している。開胸手術や上腹部の手術は呼吸への影響が大きいことが知られているが,では,乳腺手術の際にはどのように考えればよいのだろうか。麻酔も,全身麻酔であれ脊髄幹麻酔であれ,呼吸への影響が大きい。呼吸管理は,麻酔の本質の一つである。なぜなら,鎮痛や鎮静は必ず呼吸抑制を伴うからである。つまり麻酔とは「息をさせ続けること」とも言える。ただでさえ呼吸機能の低下した患者をうまく麻酔する,つまり息をさせ続けるには,どのような配慮が必要だろうか。
これは難題である。何らかのガイドラインやマニュアルやフローチャートどおりというわけにはいかない。準備段階はもちろん,手術室入室後も,その時々の患者や術者からのわずかな情報を鋭敏に感知し,解剖学や生理学や薬理学の知見を動員し,自分で考えながら,戦略を立てていかなければならない。なかなか言葉では表現しづらい細かな気遣いを積み重ね,丁寧に丁寧に慎重に事を進めなければならず,まさに職人技が求められる。誌上でその職人魂までお伝えすることは難しいが,いずれのPLANにもそんな麻酔のプロらしい思考が詰まっている。
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