徹底分析シリーズ 日本版 敗血症診療ガイドライン2016—診療ガイドラインをどのように臨床に用いるか
急性腎障害・血液浄化療法—血液浄化療法は,症状と病態をよく理解して開始する
土井 研人
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Kent DOI
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1東京大学医学部 救急科学
pp.316-321
発行日 2018年3月1日
Published Date 2018/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201079
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急性腎障害acute kidney injury(AKI)は敗血症における重篤な合併症の一つであり,有意に死亡率を上昇させることが,数多くの疫学研究にて明らかとされている。敗血症性AKIの病態生理は敗血症と同様に複雑であり,微小循環障害や過剰な炎症反応,尿細管上皮細胞におけるミトコンドリア障害など,複数のメカニズムが同時多発的に生じることで腎障害が惹起されると考えられている。基礎研究の分野において,いくつかの敗血症性AKI治療薬候補が報告されているが,いまだ臨床応用されたものはない。その理由として,病態が複雑であることに加えて,早期診断・早期介入が敗血症性AKIではこれまで十分に行われていなかったのではないか,という問題点が指摘されている。
血液浄化療法が,重症AKIによる致命的な状況に有効なことは明らかである。AKIに対する血液浄化療法の主たる目的は,失われた腎機能の代替renal replacement therapy(RRT)であり,この十数年の技術的な進歩により,重篤な循環不全を呈する症例にも安全に施行できるようになった。一方,必要最小限のRRTとしての血液浄化療法に加えて,さまざまな治療条件・開始タイミングを最適化することで,敗血症の治療成績に改善がみられるか否かが論点となり,数多くの臨床研究が施行されてきた。高いエビデンスレベルをもって敗血症あるいは敗血症性AKIの予後を改善することが証明された血液浄化療法はいまだないものの,現在進行形にて研究が進められている。
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