症例検討 麻酔手技に伴う合併症とその対処
手指のしびれが残ってしまった…—たかが静脈路確保,されど静脈路確保
千葉 聡子
1
,
井関 雅子
1
Satoko CHIBA
1
,
Masako ISEKI
1
1順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座
pp.138-142
発行日 2016年2月1日
Published Date 2016/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200498
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症例
55歳の女性。身長148cm,体重85kg。肝細胞癌に対して肝右葉切除術が予定された。硬膜外カテーテル挿入後,左手背に確保した22Gの静脈路から全身麻酔を導入し気管挿管を行った。腹部手術の既往があり,多量の出血が見込まれたため,もう1本静脈路を確保することにした。肥満のために両上肢とも静脈が見えづらかったが,右手関節近くの橈側皮静脈がかろうじて触れた。そこから18Gの静脈カニューレで数回穿刺を試みたが成功せず,断念。結局は,指導医が別の場所から静脈路を確保した。手術室で抜管しICUへ搬送した。ICU入室後意識が清明になると,患者は右前腕の静脈路の穿刺部と右手に広がる強い痛みを訴えるようになった。3日経過して痛みは軽減したものの,右母指,示指のしびれは残っている。患者は美容師で,この状態では仕事に支障があるという。
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