徹底分析シリーズ 神経精神疾患と麻酔
コラム:注意すべき病態2:セロトニン症候群
足立 裕史
1
,
若林 健二
1
,
中沢 弘一
1
Yushi ADACHI
1
,
Kenji WAKABAYASHI
1
,
Koichi NAKAZAWA
1
1東京医科歯科大学医学部附属病院 集中治療部
pp.1244-1248
発行日 2015年12月1日
Published Date 2015/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200456
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セロトニン症候群は,1990年代後半から注目され始めた比較的新しい症候群で1),主として抗うつ薬などを服用している患者において脳内(あるいは末梢においても)のセロトニンが過剰となって発症する病態である2)。体温上昇,腱反射亢進,ミオクローヌス,興奮など,悪性症候群(1240ページ)と類似した症状を示し,両者の鑑別に難渋することも多い3)。セロトニン症候群は,薬物の予期しない反応の結果として生じる病態で,その症状はさまざまな臨床徴候を呈し,重症度も軽微なものから致死的なレベルまでが存在する2)。
全身麻酔は患者の意識状態を極限にまで変化させる医療行為であり,使用する薬物もセロトニン症候群を惹起させる可能性が高い。全身麻酔そのものは,精神神経学的な変化の徴候をすべてマスクするため,麻酔中の発生頻度が不明なのは仕方がないにしても,麻酔直後の周術期に生じるセロトニン症候群は,覚醒遅延やせん妄として見落とされてきた可能性がある4)。麻酔科医にとっても無縁の疾患ではない。
2011年4月に厚生労働省から発表された重篤副作用疾患別対応マニュアル5)に,セロトニン症候群も取り上げられている。臨床医であれば,頭の隅に置いておきたい。
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