徹底分析シリーズ 研修医の素朴な疑問に答えます 血液製剤
輸血用血液を希釈するのに適切な溶液とは
香取 信之
1
KATORI,Nobuyuki
1
1慶應義塾大学医学部 麻酔学教室
pp.1134-1135
発行日 2014年12月1日
Published Date 2014/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200064
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●輸血用血液製剤は希釈しない
通常の臨床で,輸血用血液製剤を希釈する必要はない。しかし,一つの静脈路から輸血と輸液を同時に行うことはあり得る。薬物に混合禁忌があるように,輸血用血液製剤も不用意に混注すると,点滴セット・輸血セット内での凝固や溶血を生じる。
そもそも血液は,採血直後から凝固系が活性化し,トロンビン産生からフィブリン産生に至り,数分で凝固してしまう。ただし,血液凝固因子,特にビタミンK依存性凝固因子は活性化にイオン化カルシウムの存在が必須であるため(ミニ知識1),輸血用血液製剤にはクエン酸ナトリウムが添加されている。クエン酸は,体内にも存在する物質だが,2価の金属イオンと結合し安定した錯体を形成するため,血中のイオン化カルシウムと結合し,トロンビン産生を阻害する1)。トロンビン産生がなければ,フィブリンを生じることはないので,輸血用血液製剤は凝固することなく保存が可能となる*1。また,トロンビンには強力な血小板活性化作用もあるので,クエン酸添加によりトロンビン産生を阻害することで血小板の保存も可能となる(図1)。
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