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◆あったはずの書籍が忽然と姿を消し,代わりに旧版の書籍に入れ換わっていた。最近,LiSA編集部で起きた“事件”です。その真相は解決されていません。あんなに探したのに見つからず,諦めて代替手段でしのいだ後に,ヒョッコリ出てくるのが“探し物”の常ですので,これも絶妙なタイミングで解決されることでしょう。
モノにあふれた現代日本を象徴するかのように,いつも何かを探しているような気がします。職場では,消しゴム,蛍光ペンのキャップ,そしてプリントした書類や原稿も…。家では,はさみ,自転車の鍵,靴下の片方とか。
◆よく探しているというのは,よく失くすからです。特に,冬季は要注意です。外は寒いですから,防寒対策を行って外出をしますが,しっかりと暖房された電車に乗ったら手袋は不要です。膝の上に置いて読書にふける。ハッと気がついたら降りる駅! 慌てて駆け出し,手袋だけ車内に取り残されて…。鉄道の遺失物窓口に届け出て,何度か「見つかりませんか?」と足を運んでも,出てきません。
この段取りで,ひと冬に帽子とマフラーと手袋のすべてを失った私は,以来,電車内でも帽子とマフラーは装着したままとなり,手袋は非常に安価なものを選択するようになりました。
◆神社で引くおみくじに「失物」の項目が必ずあることを思い起こすと,誰しも何かを探しているのでしょう。「自分探し」なんて青臭いものではなく,かつては所有していたのに,今は手元にないものを。
それが「データ」だった場合,失ったものを取り戻すのは難しそうです。ビットコインは,たぶん所有者には戻らないでしょうし,電子書籍のデータが,サービス提供会社の都合で消え失せるかも,という話も耳にします(真相は不明ですが)。そして“消えた年金記録”。当時の安倍首相は,最後の1件まで探し出します,と高らかに宣言していました。よもや,“政治家の言葉は辞任すればチャラ”なんてことが許されるはずはありませんから,当然,探し続けているはずです。でも,終結宣言は聞きません。
やはり「データ」を所有することのおぼつかない感じ,指の間から砂がこぼれ落ちるような感じを拭うことはできず,原稿は紙にプリントし,紙の書籍を購入します。当然,どこにいったかな…と,あちこちひっくり返すことにはなるのですが。
◆かつて,ある編集部の総務担当者が,資料として共有書棚に揃えているバックナンバーが頻繁に欠落してしまうことに対して,「現在,持ち出しにくく,戻しやすい保管方法を検討中ですが,皆さんもきちんと戻してください」と叫んでいたことを思い出します。残念なことに,この夢の保管方法は見いだせなかったようです。
で,今回の「失物考」,使ったら元に戻すべし,という当たり前の結論に行き着くのでした。
そしてやはり,暖かい日が数日続いたとたんに,手袋が見当たらなくなりました。夏になったら出てくるのでしょう。
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