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◆昨年の12月,どうにも充電が必要になり数日の休暇をとって旅行に出かけることにしました。さて,どこに向かおうか。いろいろ候補は挙がりましたが,結局,東北方面に。
ガイドブック片手に,あそこでコレを食べよう,このミュージアムに行こう,と山盛りなプランの中に『石巻日日新聞』も入れました。
ニュースになりましたし,テレビドラマ化もされましたので,ご存知の方も多いと思います。石巻市を中心に地域の夕刊紙を発行しているこの新聞社は,3.11.で被災しつつも壁新聞という形で新聞を発行し続けました。このときの壁新聞の実物を石巻市内で展示しているとガイドブックにあったので,見学することにしたのです。
◆ちょっとした偶然が重なり,幸運にも当事者の解説つきで見学ができました。
まずはマスター版を作成し,それを手分けして書き写し,6か所に貼り出したこと。紙は新聞用のロール紙があったので,ロールからカッターで切り取って利用したこと(なので,上下がいびつなものも)。各所への掲示は午後5時までに行うと決め(停電中で日没後は暗くて読めない),そのため取材活動に費やせる時間も非常に短かったこと。なので,書き写すにもスピードが重視され,文字も行間も乱れてしまっていること(お世辞にも,奇麗な字とは言えません)。見出しには,希望がもてるような言葉を使うようにしたこと(ただでさえ皆,絶望的になっているので)。
避難所ごとの避難者数を一覧にした別紙もありました。大雑把に200~300人としている小学校から,例えば27人と具体的な数値で示される小さな集会所まで,その箇所は曖昧な記憶ですが,50には上っていたように思います。すべて,記者の方々が歩いて回って情報収集し,まとめたものでした。この一覧は,家族を探すのに役立っていたと言います。
◆このようにして,壁新聞版の石巻日日新聞は2011年3月12日から17日までの6日間発行されました。今日を生き抜くのに必死だった住民を支えた7枚の紙を前にして,ここに詰め込まれた背景にただ圧倒されるばかりでした。
後日,掲示した場所とは違う避難所にこの新聞が保管されていたというエピソードとともに,「避難所間で回し読みされていたと後でわかったときは,嬉しかったぁ」とは,解説してくださった方の言葉です。
LiSAは,ニュース雑誌でもなければ,日刊紙でもありません。けれど「情報を発信する」点は共通です。その情報を欲している人はどこにいて,どんな状況に置かれているのか。それを伝えるために自分は何をすべきなのか。情報を発信することの原点に触れたような気がいたしました。
◆東松島から石巻へ津波の被害が大きかった沿岸部を移動しましたが,さらわれたかつての日常には荒野が広がるのみでした。
あの地震から3年が経ちます。
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