症例検討 術中の低酸素血症1
低酸素血症の頻度とその原因―安定した酸素供給なくして麻酔管理を語るなかれ
羽鳥 英樹
1
,
森崎 浩
1
Eiki HATORI
1
,
Hiroshi MORISAKI
1
1慶應義塾大学医学部 麻酔学教室
pp.1206-1210
発行日 2013年12月1日
Published Date 2013/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101102000
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麻酔管理はしばしば航空機のフライトに例えられる。危険が多い離陸を無事にこなして安定した飛行状態に達すると,時に眠気を誘うほど快適である。しかし,このフライトの快適さはごく些細なことで破られる。フライトを危険に陥れるほどの脅威,すなわち麻酔管理において直ちに患者の生命危機となる脅威と言えば,低酸素血症がその筆頭である。
2004~2008年度の日本麻酔科学会麻酔関連偶発症例調査1)(対象5574487名)によると,高度低酸素血症の発症率は1万例につき2.45例,これによる術後7日以内の死亡率は0.15例であった。高度低酸素血症の主な原因として,麻酔管理によるものが32.6%と最も多く,以下,術前呼吸器合併症(21.1%),術中発症の病態(13.2%)が続く(図1)。高度低酸素血症を防ぐには,術中低酸素血症の原因について熟知し,日常からその対策を講じておくことが大切である。
麻酔管理による低酸素血症の原因として,ヒューマンファクターがほかの麻酔・呼吸回路の接続関連(6.2%)や機器の整備・点検不備(2.4%)に比べ,80.6%と大半を占める。ヒューマンファクターのなかでも,特に気道確保・管理の不適切が多い(表1)2)。また検証結果では,高度低酸素血症の50%以上が予防可能で,心停止や高度低血圧の25~30%と比べて著しく高かった。
では,実際に遭遇する術中低酸素血症は,何が原因となるのだろうか。本稿では,具体的な症例検討に入る前に,術中の低酸素血症の原因(表2)となる各ポイントを概説する。
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